青木さんの作品が出来上がったのは開幕3日前の4月26日のことでした。
高さ3mを超える5つの山と、水面にできる波紋のような造形、
そしてそこから吊るされた紙やせんべい、干し菊で作品は構成されています。
よく見ると、山の頂上付近にも白くて丸いものが付いています。
これは鶏卵です。
生卵のまま、銅線で山に括り付けられています。
作品のタイトルは《もどる水/八戸》。
青木さんの作品のキーワードに「水」があり、今回の作品も水をテーマに制作されました。
空から降る雨――「八戸の文化」とも言い換えることができるせんべいや干し菊、
それらが大地に染み込んでいくようにも、山から発生した霧が雲になるようにも捉えることができます。
そのちょうど中間に位置する場所にある、卵。
青木さんの作品で唯一、動物性を持った存在でもあります。
この卵からは、一体何が生まれるのでしょうか?
「美しいHUG!」開幕の前日に行われた報道向けの内覧会で、
ゲストキュレーターの森さんによる「この作品は青木さんの世界を表現しているのですね?」という問いかけに、
「そうです」と答えた青木さん。
もしかしたらこの作品世界の中で、
卵は動植物の生命そのものや、人々の生活の営みを象徴しているのかもしれません。